家(マイホーム)を売却したときに関わる税金は、日頃あまり売買を経験していないだけに初めての方には特に分かりにくい部分です。しかり、売却して譲渡所得税を納めないと延滞税がかかり必要以上に税金を支払うことになりますし、知っていれば優遇税制や特例措置もあり節税にもつながります。このページでは家を売却した場合にかかる税金の構造と各種税金の計算方法、および特例措置などを解説します。
[目次]
1.譲渡税(譲渡所得にかかる税金)の構造と確定申告
2.譲渡所得とは
3.課税対象価格とは
4.譲渡税とは
5.特例措置、軽減税率以外の特例
6.確定申告の時期
1.譲渡税(譲渡所得にかかる税金)の構造と確定申告
最終的な譲渡税は次の計算になります。
この譲渡税を税金面での優遇措置をわかりやすく理解するために3つに分けて説明します。
1−1.譲渡所得=売却価格 − (取得価格 + 取得費用)
- 譲渡所得は収入である売却価格から支出(取得価格と取得費用)を差し引いたものになります。
- 譲渡所得がプラスの方は確定申告が必要です。
- 譲渡所得がマイナスの方は、確定申告は必要ありませんが、繰越控除など税金を安くすることができる場合もあり、その場合は確定申告が必要になります。
1−2.課税対象価格 = 譲渡所得 − 特別控除
- 1.で得られた譲渡所得から、税金を軽くするために特別に控除できるものを課税対象価格となります。
- 特別控除を利用して、課税対象価格がゼロになる方も多いと思いますが、特別控除を利用する場合は確定申告が必要になります。
1−3.税金 = 課税対象価格 × 税率
- 2.で得られた課税対象価格に税金をかけたものが納税額となります。
分割した3つのそれぞれについて説明します。
2.譲渡所得とは
譲渡所得は次の計算式で計算されます。
譲渡所得=売却価格−(取得価格+取得費用)
・売買価格は、家などの不動産を売却したときの代金になります。
・取得価格は、売却した不動産を取得したときの価格です。 あまりに昔に取得して、記録がなく取得した金額がわからない場合は、売却価格の5%を便宜上取得価格とする決まりになっています。
・取得費には、売った土地や建物の購入代金、建築代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれます。 建物の取得費は、購入代金又は建築代金などの合計額から減価償却費相当額を差し引いた金額となります。
この計算式からわかるように、購入金額より安く売却した場合には、この段階で譲渡所得がマイナスとなり、所得がないわけですので「税金が発生しない」ことになります。
土地や家を昔に購入し、時代とともに価格が上昇し売却したときに大きな譲渡所得となる場合もあります。
例えば、20年前に23区内に一戸建てを5000万円で購入したが、売却したところ1億5千万円で売却した場合です。この場合、譲渡所得は、次のようになります。
譲渡所得=1億5千万円−(5千万円+900万円)=9100万円
3.課税対象価格とは
課税対象価格は次の計算式で計算されます。
譲渡税での各種優遇措置の大きなポイントの1つが、特別措置の対象とその金額になります。 現時点での特別控除は次のようになっています。
特別控除 | 控除金額 |
公共事業などのために土地建物を売った場合 | 5000万円 |
マイホーム(居住用財産)を売った場合 | 3000万円 |
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合 | 2000万円 |
特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合 | 1500万円 |
平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合 | 1000万円 |
農地保有の合理化などのために土地を売った場合 | 800万円 |
この特別控除により、課税対象価格が引き下げられ、結果として税金を安くすることができます。 普通の方が利用できるのはマイホームを売却した場合の3000万円の特別控除となります。 また、この3000万円の特別控除の適用上の注意点や適用を拡大するための特例がありますので自分が該当するか確認し利用した方がお得になります。
区分 | 特例 | 概要 |
適用の注意点 | 共有マイホームを売却するときの注意点 | 共有者それぞれにつき最高3000万円まで |
適用の拡大 | 家屋と敷地の所有者が異なるときの売却 | 家屋の所有者と敷地の所有者が異なるときでも、要件のすべてを満たせば、敷地の所有者もこの特例を受けることができる |
空き家にしていたマイホームを売却 | 自分が自ら住んでいて、住まなくなってから3年を経過する年の12月31日までに売却した場合は適用対象とすることができる | |
妻子だけが住んでいるマイホームを売却するとき | 本人が転勤や転地療養などの事情のため、妻子と離れて単身でほかに生活している場合で、これらの事情がなくなったときはその妻子と一緒に妻や子供が住んでいる家屋で生活すると認められる場合に適用されます | |
マイホームを取り壊した後に敷地を売却するとき | 本来マイホームを売却したときの特別措置ですが、要件を満たせば敷地でも対象にできます |
(例)譲渡所得が9100万円で、3000万円のマイホームの特別控除ができれば、課税対象価格は6100万円になります。
課税対象価格=譲渡所得−特別控除 =9100万円−3000万円=6100万円
4.譲渡税とは
譲渡税は、次の計算式で計算されます。
譲渡税(税金) = 課税対象価格 × 税率
税金面で各種の売買を支援するポイントの1つとして、税率を変更することで各種の支援を実施します。
課税対象の不動産により税率が変わります。購入後5年未満での売却の所得を短期譲渡所得、5年以上を長期譲渡所得と定義しています。それぞれの税率は次のようになっています。
短期譲渡は長期の2倍の税金がかかるという意味ですね。マイホームとしての優遇措置ですので長期に住む場合を優遇し、売買による所得獲得目的に近くなる短期譲渡には多くの税金を課すという意味合いがあります。5年前後で売却する場合は注意が必要です。
注)さらに、平成25年から平成49年は、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
(例)長期譲渡での計算例 20年前に購入した土地、建物の譲渡価額が1億5000万円、土地・建物の取得費(建物は減価償却費相当額を控除した後)が5000万円、譲渡費用(仲介手数料など)が900万円の場合
課税長期譲渡所得金額の計算
- 1億5000万円-(5000万円+900万円)=9100万円
課税対象価格の計算 9100万円−3000万円=6100万円
税額の計算 20年前であるため、長期譲渡所得になり所得税は15%、住民税は5%となります。
(所得税) 6100万円×15%=915万円
(復興特別所得税) 915万円×2.1%=19万2150円
(住民税 ) 6100万円×5%=305万円
税率の特例(軽減税率)
次の施策では、マイホームとして10年以上住んだ家で、課税対象譲渡所得が6000万円以下に関しては、税率が15%から10%に軽減されます。
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税額 |
6,000万円以下 | A×10% |
6,000万円超 | (A-6,000万円)×15%+600万円 |
(注)1 課税長期譲渡所得金額とは、次の算式で求めた金額です。
(土地建物を売った収入金額)-(取得費+譲渡費用)- 特別控除=課税長期譲渡所得金額
特例を受けるための適用要件
この軽減税率の特例を受けるには、次の五つの要件すべてに当てはまることが必要です。
(1)日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。 なお、以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。 また、これらの家屋が災害により滅失した場合には、その敷地を住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
(注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の三つの要件すべてに当てはまることが必要です。
イ その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。
ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
(2)売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
(3)売った年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと。
(4)売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないこと。ただし、マイホームを売ったときの3000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。
(5)売り手と買い手の関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。特別な間柄には、このほか、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
5.特例措置、軽減税率以外の特例
確定申告することで税金が安くなる特例を解説します。
売却/住み替え | 特例 | 概要 | 適用期間 |
売却 | 不動産を譲渡して譲渡損失が生じたとき | 繰越控除 | なし |
住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が乗じるとき | 繰越控除 損益通算 | 平成27年12月31日 | |
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | 繰越控除 損益通算 | 平成27年12月31日 | |
買い換え | 特定のマイホームを買い換えたときの特例 | 譲渡税を将来に繰り延べ | 平成27年12月31日 |
マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたときの特例 | 損益通算 繰越駆除 | 平成27年12月31日 |
6.確定申告の時期
売買をした翌年の2月16日から3月15日の間です。開始日及び最終日が土曜・日曜祝日の場合は翌営業日となります。