不動産は基本的に所有者の判断で、需要と供給により売却できますが、日本には様々な法律が絡みあっているため、売れない不動産、売りづらい不動産があります。それぞれ工夫や対応次第で売却することも可能になってきますので、まずは一読ください。ここに記載されていない不動産であれば、売りやすい不動産となる可能性が高いということになります。
[目次]
1.農地法の観点から
2.建築基準法の観点から
3.都市計画法の観点から
4.宅地建物取引法(重要説明事項)の観点から
5.間取りの観点から
1.農地法の観点から
1−1.農地は農業委員会の承認が必要です
農地を売買するためには、売主が農業委員会などに申請し許可を得る必要があります。通常は売買契約を行って申請を行いますが、申請が不許可となった時点で、売買契約は効力をなくすことになります。また、その土地が都市計画区域内であれば、都市計画法よる制限も受けることになります。 購入する方が農業を継続する場合でも農地法の許可が必要です。
相続する場合は、届け出するだけになりますが、相続でない場合も、農場従事者であれば許可がおります。 「農業従事者」とは年間150日以上耕作できる人です。農家の人が新たな農地を取得する際の許可は、ほぼ形式的なものです。 この際ですので、農地に関して通常の商取引とは違うところも整理してみます。
1−2.農地に家をたてられるのか?
最近は、都市から離れて地方に移住するかたもかなり存在するようです。それは都市での生活より自然に囲まれて生活したいという理由と思いますが、その場所が農地である場合はどうなるのでしょうか?
農地を購入して家を建てたいとすれば、農地法第5条許可が必要となります。これも許可がおりないと売買契約が成立しませんので家をたてられません。農業振興地域であれば、ほとんど無理ですが、市街化区域内であれば可能性はあります。事前に農業委員会に確認することをお勧めします。 農地を宅地などに転用する場合には、都道府県知事の許可が必要になります。農地法で、農地を宅地に転用する事を制限しているのは、農地を守るための法律です。日本の食品生産量を守るためですね。 自分の農地に家を建てる場合も結果として農地を少なくすることになりますのでやはり制約を受け、農地法第4条許可が必要になります。
しかし、この場合は市街化調整区域であっても農業経営を行っている人が行う分にはさほど厳しくはありません。農業を行う分家を建てることも可能です(農業を行わない分家は建てるのは難しいです)。
1−3.その他、農地ならではの注意点
(接道義務)
農地に家を建てる場合、全面4m以上の道路に2m以上接していることが必要ですが、農地になると条件を満たさない場合もあるので建てられない、あるいは、建てる前に道路の整備が必要なるなどの注意が必要です。
(境界線)
農地も人が所有しています。しかし、農地は宅地と違い境界線が曖昧なところが多いものです。 事前に境界を確認しておくことが注意点です。
(無許可で取得し、建築などの工事を開始している場合)
許可を得ずに行った契約は無効になります。無許可で売買し、売主が買手に損害賠償請求される可能性もあります。無断での農地転用は、工事を行っていれば、その工事には中止命令が出され、すでに宅地等が完成していても原状回復命令がだされます。無許可での転用の場合は、無許可転用と原状回復命令違反の両方に問われます。
具体的には、個人の場合には、懲役三年以下、または300万円以下の罰金刑。農地法に違反したのが法人であれば、罰金刑が適用され、一億円以下の罰金です。 許可が得られる得られないにかかわらず、とりあえず農業委員会に相談してみてください。
2.建築基準法的に
2−1.接道義務違反の物件
また、幅員4m以上の道路に接しているが、接している幅が幅員2m以下の敷地延長型の土地・戸建ての場合も、既存不適格な住宅となり、家を建てられなくなります。
(対応策)
どうしても売りたい場合は、接道義務違反の土地・戸建ては隣接している土地の所有者に売却することは考えられます。また、接している幅が幅員2m以下の既存不適格の土地・建物は、隣接している土地の所有者と交渉し、接道する土地を買い取って幅員を2m以上して適格物件にして売却するか、隣接する所有者に売却するかの2つの方法があります。 隣接の所有者の土地に余裕がある場合はともかく、普通は何かしら使っているものですので、すぐ対応できることではなく時間がかかる取引となることが多いです。
2−2.敷地延長型の土地・戸建て
接道義務違反ではない、つまり、幅員4m以上の道路に接しているが、家から道路までの間が幅員2m以上の通路になっている土地・戸建てを言います。
この物件は適格物件ですので、売れない物件ではありませんが、袋小路的な場所に存在するため日当りの問題、駐車場の問題など、購入者からみれば懸念される点が多々該当してきます。それだけ、購入者も少なくなりますので売りずらくなります。
(敷地延長型の土地・戸建ての対応策)
一般的にこのような物件は価格が押さえられるために、形は変かもしれませんが、建てられるものは同じですので、「安いほうがいい!」と言う方にはお勧めになります。 このような物件は現地に行きもせず敬遠されがちですので、懸念される日当り・駐車場などが実際良い場合は、「ひたり良好」「駐車場あり」「環境は静か」など良い点を訴求することです。
2−3.2項道路に該当する物件
2項道路というのは通称で、道路の幅が1.8m以上4m未満の道で、 市区町村が指定したものを「2項道路」と言い、正式には建築基準法第42条第2項道路と言います。2項道路は歴とした建築基準法上の道路ですので何ら問題はありません。ただし、2項道路は道路の中心から2m後退したところを道路の境界線とみなすので、 たとえ自分の敷地であったとしてもその部分には建物はもちろん門や塀等を作ってはいけません。 つまり、実質的には2項道路の中心から2m後退した部分(セットバック)から家を建てられることになります。もともと「建築基準法上の道路」というものは幅員が2m以上あることが必須なわけですが、 建築基準法が制定されるよりも以前に造られた道路は幅員が4m以下のものもあったわけです。 しかし、住宅はすでに建っているわけですから、4m無理やり確保しようとすると 住宅部分を削るようなことも起きてしまいます。
(2項道路該当物件の対応策)
セットバックしても十分に家を建てられることをまず訴求することが売却する場合には必要です。また、将来的に4mに幅員される予定が都市計画としてあるのであれば、物件価値としては良くなるポイントになりますので、駐車場が確保できればメリットになりますので、プラス材料を訴求してください。
2−4.既存不適格物件
既存不適格とは建築当時は合法的に建物が建築されたにもかかわらず、 その後の法律の改正等により建蔽率・容積率、建物の高さなどがオーバーし違法状態になってしまったものをいいます。
また、合法的に建築された後、何らかの理由により土地の一部を売却した場合、 土地が減った為に建物の建蔽率・容積率がオーバーし、違法状態になってしまう場合もあります。 いずれの場合も自分が住んでいるときにはそこまでの問題はありませんが、 売却を考えた場合には買主サイドのローンが通りにくいので、結果として売りづらい物件になってしまいます。
(既存不適格物件の対応策)
これは既存物件が現行の法律では不適格となった物件ですので、不適格となった条件により対応策がことなります。 例えば、容積率や高さの問題であれば、それ以内で立て直せば適格物件になります。つまり、売れないわけではないので、建築条件を購入者に正しく伝えるにしても、物件としての良いポイントを訴求することがポイントです。
3.都市計画法的に
3−1.いつ施行されるか不明であるため、売れるときに売却した方が良い
広い道路の新設や既存道路の拡幅によって、周辺環境が大きく変化する場合があります。都市計画道路の内容については、都市計画図などで確認をするのが基本となるものの、現地や周辺の状況を見ることによって分かることも多いでしょう。 道路が新しく造られたり、既存の道路が拡幅されたりすることによって、周辺の環境や利便性が大きく変わることもあります。購入しようとする敷地が都市計画道路にかかっているときには、事前に必ず説明されるはずですが、少し離れた位置の計画については説明されない場合もあるため、自分で調べてみることも必要です。
しかし、道路用地が確保されているのにもかかわらず、その工事が長い間にわたり手付かずのままとなっているようなケースもあります。通行などの際に何らかの不便や不都合がないかどうかについてもチェックが必要です。
一方、道路計画が策定されてからその事業が実施されるまで、数十年かかるようなことも少なくありません。その間に建てられるマンションやビルでは、道路予定地部分を駐車場などにしているケースも多くみられますが、その部分の整備は中途半端になりがちです。
また、道路の計画だけが決まっていてその事業が未定の段階(計画決定段階)では、2階建て以下(自治体による緩和規定がある場合は3階建て以下)の地階を有しない木造、鉄骨造などであれば建築が認められます。そのため、既存の道路に面した拡幅予定地部分に木造一戸建て住宅が残り、その奥にマンションなど高い建物が建てられているケースもあります。 計画決定がされたものの長期間にわたって事業決定がされない都市計画道路について、計画の変更や廃止など見直しを進めている自治体も一部にありますが、何十年も凍結されていた計画がいきなり動き出すこともあります。 道路予定地にかかる建売住宅が分譲されたり、中古住宅が売られる場合もありますが、「ずっと事業化されていないから、これからもきっと大丈夫」などと思わずに、事業化された場合にどうなるのかをしっかりと確認することが必要です。
(都市計画法への対応策)
売却しようとする不動産(土地、戸建て、マンション)が都市計画道路に関係する場合は、行政側の土地収用を待っているのか、売れるときに売ってしまうのかによりますが、土地収用は何時施行するかわかりません。等価交換で新しい土地に移るにしても自分で場所を選択できません。 お勧めとしては、売れるときに売却し、住みたい場所に住まいを確保するのが良いと思います。
4.重要説明事項に該当する不動産
4−1.定期借地権の戸建て・マンション
土地を借りて建物を建てるものです。土地は借りるため所有権の不動産と比較すると槍安です。 が、建物は完成した瞬間から償却がはじまりますので、資産価値がゼロに向けて減少がはじまります。 例えば、マンション(鉄骨鉄筋コンクリートの建物などの住戸)は、耐用年数47年ですので、50年の定期借地権の場合、建築期間も含めるとほぼ50年かかりますので、期限が切れるときには価値がゼロになります。 購入者の視点で考えると、上記のこともあり、銀行等で不動産ローンを使えないことがあります。銀行としても資産価値が毎年減少する不動産の購入にはお金は貸せないということですね。
(借地権の戸建て・マンションの対応策)
所有権の不動産と比較すれば割安ですので、全く売れないわけではありません。 資産価値がゼロになろうが、自分はその家に住んで、期限がくれば老人ホームなり、子供といっしょに住むので、それまで安い家に住む、という考え方もあると思います。 ただ単に、このような不動産を探している購入者の母数が少ないため、中々購入者が現れないため、売りづらくなります。 物件の状態や環境などいろいろな面で物件価値が変わりますので、定期借地権のマイナス面を上回る価値を提案することが大事です。
4−2.送電線の下にある戸建て・マンション
建築が可能な送電線下の土地はそれなりに安いため、送電線が気にならない人であればこのような土地や住宅の購入を検討することもあるでしょう。 しかし、上記の離隔距離による制限のため、建築基準法上では3階建てができるのに実際は2階までしか建てられない、あるいは平家しかできないといったケースもあります。 特高線は電磁波が出てますので、健康被害の点も考えると、購入者も少なくなり、近隣との相場比較でも安めになる傾向があります。
(送電線の下にある戸建て・マンションの対応策)
購入するときも周辺の地域から比較すると割安だった物件だと思いますので、売るときも周辺と同じ金額ではなかなかうれません。このような物件の対策は王道しかありません。つまり、売却値段と物件そのものの良い面を訴求することです。
4−3.境界未確定や公簿面積と実測面積に違いがある
土地・戸建てによくあることですが、売却するときに境界が未確定だった場合や、公簿面積と実際の面積が異なる場合があります。このような物件は、どちらかと言えば売りづらい不動産というより、売却するまでに境界を確定したり、公簿面積と実測面積を合わせたりと事前に行うべきことが多く、時間がかかることになります。
(対策案)
まず、境界を確定し、公簿面積と実測面積をあわせましょう。 そこで初めて正しい資産価値評価を行うことができます。
5.間取り的に
5−1.収納率が極端に少ない間取り
部屋数を多くとりたいために、収納する空間が極端に少ない物件がたまにあります。特に、都心のマンションやリフォームで収納スペースを考えなかった物件ではその傾向があります。購入する側としてみれば、収納が少ないと生活しづらくなる、リフォームする必要がありリフォーム代が必要になる、ということにつながり、購入者が少なくなる傾向があります。
(対策案)
一般的に、どの家族も生活するためには一定の収納が必要になります。 そのため、環境などが良くても生活しずらいのでは買い手も現れません。購入後リフォームしたいので、物件価格の引き下げを依頼してくることもあります。柔軟に対応することがうるためには必要です。
5−2.生活スタイルを無視した間取り
浴室で着替えができず、廊下で着替えざるを得ない、トイレの出入りが玄関から丸見え、リビングから浴室に入るなど、家族だけの生活空間だけなら良いですが、そこにお客様が訪問された場合やお客様の目線が気になり、やりたいことができない、ということでは問題です。
(対策案)
普段の生活では気になりませんが、お客様が訪問されたときは我慢が必要になります。環境などが良くても生活しずらいのでは買い手もなかなか現れません。まったく購入者がいないわけでもありませんが、そんな物件でも良いというある意味、購入者を選ぶ物件となり売りづらい物件となります。購入後リフォームしたいので、物件価格の引き下げを依頼してくることもあります。柔軟に対応することがうるためには必要です。
6.まとめ
法律で絶対に売れない(流通しない)不動産でなければ、何かしら対策案はあると思います。とは言え、そこには様々な法律が関係しています。また、土地計画法などに該当する不動産の場合は売却するタイミングや方法も慎重に判断する必要があります。やはり、専門的な知識を持つ実績の多い不動産会社に依頼するのが一番の解決策です。
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