特定のマイホームの買い換えた場合の特例

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税金

特定のマイホーム(居住用財産)を、平成27年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特定の居住用財産の買換えについて説明します。

 

[目次]
1.制度の概要
2.買い換え特例の要件
3.買換えの特例を受けて買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算

1.制度の概要

 特定のマイホーム(居住用財産)を、平成29年12月31日までに売って、代わりのマイホームに買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。 これを、特定の居住用財産の買換えの特例といいます。

 例えば、1000万円で購入したマイホームを5000万円で売却し、7000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常の場合、4000万円の譲渡益が課税対象となりますが、特例の適用を受けた場合、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。この制度を図で説明すると次のとおりです。

特定のマイホームの買い換え特例 特定のマイホームを買い換えたときの特例の具体例の図
(注)説明を簡潔にするため、減価償却などは考慮していません。
 

 この場合、課税が将来に繰り延べられるとは、上記の例により説明すれば、買い換えたマイホームを例えば将来8000万円で売却した場合に、売却価額8000万円と購入価額7000万円との差額である1000万円の譲渡益(実際の譲渡益)に対して課税されるのではなく、実際の譲渡益1000万円に特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた4000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5000万円が、譲渡益として課税されるということです。

1−1.特例を受けるための適用要件

(1)自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売ること。

 (注) 住んでいた家屋又は住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の三つの要件すべてに当てはまることが必要です。

イ その敷地は、家屋が取り壊された日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものであること。
ロ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
ハ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。

(2)売った年の前年及び前々年にマイホームを譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例又はマイホームを売ったときの軽減税率の特例若しくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

(3)売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるもので、売ったマイホームについて、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けないこと。
(4)売却代金が1億円以下であること。
 この特例の適用を受けるマイホームと一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、マイホームを売却した年の前々年から翌々年までの5年間の分割して売却した部分も含めた売却代金により行います。 このため、マイホームを売却した年、その前年及びその前々年の売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例を受けていた場合で、マイホームを売却した年の翌年又は翌々年にこの特例の適用を受けたマイホームの残りの部分を売却して売却代金の合計額が1億円を超えた場合には、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。
(5)売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。
(6)買い換える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること。
(7)マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること。 また、買い換えたマイホームには、一定期限までに住むこと。
 
 買い換えたマイホームを住まいとして使用を開始する期限は、そのマイホームを取得した時期により次のようになります。
 
イ 売った年かその前年に取得したときは、売った年の翌年12月31日まで
ロ 売った年の翌年に取得したときは、取得した年の翌年12月31日まで
 
(8)買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること。 ただし、耐火建築物以外の中古住宅及び耐火建築物である中古住宅のうち一定の耐震基準を満たすものについては、建築年数の制限はありません。
(9)マイホームを売った人とそれを買った人との関係が、親子や夫婦など特別な間柄でないこと。特別な間柄には、このほか生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
(注)この特例の適用を受ける場合には、マイホームを譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例(措法35条)やマイホームを売ったときの軽減税率の特例(措法31条の3)の適用を重ねて受けることはできません。

1−2.適用を受けるための手続

この特例を受けるためには、次の書類を添えて確定申告をすることが必要です。

(1)譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

(2)売った資産の登記事項証明書等で所有期間が10年を超えるものであることを明らかにするもの
(3)買い換えた資産の登記事項証明書や売買契約書の写しで、取得したこと及び買い換えた資産の面積を明らかにするもの
(4)売った資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた住民票の写し(売った日から2か月を経過した日以後に交付を受けたもの)又は戸籍の附票の写し等で、売った資産における居住期間が10年以上であることを明らかにするもの
(5)買い換えた資産の所在地を管轄する市区町村長から交付を受けた住民票の写し
(6)売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることを明らかにするもの
(7)買い換えた資産が耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであることを明らかにする書類、又は耐震基準適合証明書など

2.買い換え特例の要件

 買替えをしたが、不動産を譲渡した年に住み替えができなかったときってありますね。主に売り先行で戸建てを新築した場合には、購入した住居の引き渡しには時間がかかりますのでこのようなケースが発生します。

譲渡した年に買換えができなかった場合、買い換えた年の翌年の12月31日までに買い換えたマイホームに住むことが必要です。

2−1.買い換え特例を受ける場合の申告手続き

 売った年の翌年に買い換える場合の申告の手続について説明します。

 確定申告書には、取得する予定の買換資産についての取得予定年月日及び取得価額の見積額その他の明細を記載した「買換(代替)資産の明細書」を添えてください。この段階では取得価格が確定していないこともありますので見積もり額を添付することになります。 この場合の譲渡所得の計算は、この取得価額の見積額に基づいて行います。 買い換えるマイホ-ムを実際に取得した場合は、買った資産の購入代金などの支払明細などを提出して精算することになります。

2−2.取得金額と見積額が異なる場合の修正

(買い換えた家の取得金額が見積額より大きい場合)

この場合は買い換えとしての費用が膨らむことになりますので譲渡所得に係る税額が減少することになります。

・譲渡所得の税金を減らすためには更正の請求をすることが必要です。
・マイホ-ムを買った日から4か月以内に更正の請求をすることができます。

(住み替えた家の取得金額が見積額より少ない場合)

この場合は、上記とは逆に譲渡所得に係る税額が増加することになります。
 
・修正申告と納税が必要です。
・修正申告と納税は、マイホ-ムを売った年の翌年の12月31日から4か月以内に行ってください。 「売った年の翌年の12月31日から4か月以内」という条件は非常に厳しいので、何かと忙しい本人が忘れず修正申告するのは難しいと思われますので、信頼できる不動産会社や税理士に任せるのが良いでしょう。
 

3.買換えの特例を受けて買い換えた資産の取得価額とされる金額の計算

 居住用財産の買換えの特例を受けた場合には、譲渡した居住用財産(旧居住用財産)の譲渡益に対する課税が将来に繰り延べられることとなります(譲渡益が非課税となるわけではありません)。このため、買い換えた居住用財産に、譲渡した居住用財産の取得価額が引き継がれることとなっています。この買い換えた居住用財産を、将来、譲渡した場合における譲渡所得の計算上の取得価額について具体的な事例とともに説明します。

 居住用財産の買換えの特例を受けた場合には、譲渡した居住用財産(旧居住用財産)の譲渡益に対する課税が将来に繰り延べられることとなります(譲渡益が非課税となるわけではありません。 このため、買い換えた居住用財産に、譲渡した居住用財産の取得価額が引き継がれることとなっています。この買い換えた居住用財産を、将来、譲渡した場合における譲渡所得の計算上の取得価額は、その買い換えた居住用財産の実際の購入価額ではなく、譲渡した旧居住用財産から引き継がれた取得価額となります。 この取得価額の引継ぎについて具体的な事例で説明します。

(例1)居住用財産の売却額と買い換えた居住用財産の購入額が同じ場合
 
売却額:5000万円
譲渡費用:100万円
 
売却した居住用財産の取得価額:3000万円(土地及び減価償却後の建物価格の合計)
買い換えた居住用財産の購入額:5000万円(土地3500万円、建物1500万円)
引き継ぐ取得価額の計算:3000万円+100万円=3100万円
引き継ぐ取得価額の土地と建物への配分の計算
  (土地) 3100万円×3500万円/5000万円=2170万円
  (建物) 3100万円×1500万円/5000万円=930万円

※したがって、将来、買い換えた居住用財産を売却した場合の取得価額は、実際の購入額ではなく、上記のとおり、土地については2170万円、建物については930万円から売却時までの償却費相当額を控除した後の価額となります。

(例2)居住用財産の売却額よりも買い換えた居住用財産の購入額の方が多額の場合
 
売却額:5000万円
譲渡費用:100万円
 
売却した居住用財産の取得価額:3000万円(土地及び減価償却後の建物価格の合計)
買い換えた居住用財産の購入額:6000万円(土地4200万円、建物1800万円)
引き継ぐ取得価額の計算:(3000万円+100万円)+(6000万円-5000万円)=4100万円
引き継ぐ取得価額の土地と建物への配分の計算
  (土地) 4100万円×4200万円/6000万円=2870万円
  (建物) 4100万円×1800万円/6000万円=1230万円
 
※したがって、将来、買い換えた居住用財産を売却した場合の取得価額は、実際の購入額ではなく、上記のとおり、土地については2870万円、建物については1230万円から売却時までの償却費相当額を控除した後の価額となります。

(例3)居住用財産の売却額よりも買い換えた居住用財産の購入額の方が少額の場合
売却額:5000万円
譲渡費用:100万円
売却した居住用財産の取得価額:3000万円(土地及び減価償却後の建物価格の合計)
買い換えた居住用財産の購入額:4000万円(土地2500万円、建物1500万円)
引き継ぐ取得価額の計算:(3000万円+100万円)×4000万円/5000万円=2480万円
引き継ぐ取得価額の土地と建物への配分の計算
  (土地)2480万円×2500万円/4000万円=1550万円
  (建物) 2480万円×1500万円/4000万円=930万円

※したがって、将来、買い換えた居住用財産を売却した場合の取得価額は、実際の購入額ではなく、上記のとおり、土地については1550万円、建物については930万円から売却時までの償却相当額を控除した後の価額となります。

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